ぱんぱんぱんっ
昔おねえちゃんと呼ばれていた怪獣。
以前はこっちの妹と瓜ふたつだったはずなのに。
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メエギイが挙動不審である。
部屋で一番高いカーテンレールの上に陣取って、しきりに右を見て左を見て降りてこようとしない。指で迎えに行くと、そこは手乗りドリのかなしさ、何を気にしていようとついつい乗ってしまうのだけれど、やっぱり腰がぐいと引けていてすぐに安全地帯のカーテンレールに舞い戻るが、そこでも何だか安らがない。めったに出さない声をあげて小さな円を描いて飛ぶ。ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ。また同じ場所に戻る。
メエギイはなかなかデリケートで、ねじさじに比べると見慣れないものへの警戒心がたいそう強いのだった。特に色の濃いものが苦手で、以前は人間山のカラフルなポーチが視界に入ると身体を細くしてたいそう嫌がっていた(ドライヤーや掃除機やみるっこ等の騒音は意外と平気)。さてさて何が気に入らないのかとあたりを見まわしてカラフルな表紙の雑誌を裏返したりしたけれど、これといった原因が分からない。ケージに戻るよりカーテンレール死守、という姿勢なので、朝方仕事に行く前の放鳥収拾にヒトはだいぶ難儀した。
それでも一日経ち二日経って、さすがに2羽の様子も落ち着いた。そこで、メエギイを指やら肩に乗せて、ほらほら世の中は平穏であるのだよだいじょぶだよと教え諭していたそんなときのこと。窓の外に最近よく見るドバトのカップルが来ているのに気づいた。
うちにドバトが来るのはたいそう珍しかったので、最初はねじさじに「灰色の大きいおねえさんが来たねえ」などと語っていたヒトではあったけれど、毎日見かけるようになるといくらトリ好きとは言え、だんだん複雑な気持ちになる。ドバトのみなさんに進んで営巣地を提供しようとは思わないので、自然と居心地の悪さをアピールして早々にお引取りいただく姿勢になった。とは言え部屋の中からの強めのアイコンタクトではまったく効果がないので、放鳥中で窓を開けられないときなどは強めに手を叩くのだった。
ぱんぱんぱんっ!
瞬間、メエギイにびりびりっと緊張が走ったのが分かった。あわあわとカーテンレールの上に逃げていって、はあはあと息をする。身体全体でもうここから降りませんと言っている。ああこりゃこりゃ。このヒトが原因だったのか。
窓の外のハトさんは、やれやれと言わんばかりのスローペースでえっこらと方向転換し、飛んで逃げてくれればいいものを、隣のベランダ側にとことこと歩いて消えていった。さてメエギイよごめんよ。ハトさんも帰ったし世の中は本当に平和なんだ。穏便に降りてきてはくれまいか。説得力全然ないか。そうかそうか。
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非怪獣モード。