« 趣味つながり | メイン

ねじの日再び

やあやあやあ。

またねじの日がやってきた。あれからもう1年経ったなんてねじもきっとびっくりだ。ヒトもトリたちもみんなひとつ歳をとったよ。まだここを読んでくれてる奇特なあなたもきっとそうだ。どうもありがとう。

さじ

さじはあいかわらずさじのまんま、最愛の趣味はまだひもかじりだ。ロープの先端をほぐして唾液と共にぐずぐずと毎日毎日大事にかじって、ちいさいこぶをいくつもこしらえる。こうして長いことかけてできあがった貴重なひもオブジェ(お世辞にもきれいとは言いがたい)はメエギイ姉妹にもなぜか人気で、放鳥中はさじから取りあげて遊んでいる。とは言えこの2羽はけっして自分たちでそんなオブジェを作ろうとはしない。もともとふんわりほぐほぐ派なのに、さじオブジェには抗しがたい魅力があるらしいのだ。もちろんヒトにはちっともありがたみがわからないので、ときどき「もういいだろうよう」とつぶやいて結んであったオブジェを真っ白なロープと付け替えてしまう。するとね。さじさんはちっとも気分を損ねずに、新しいロープをまた嬉々としてかじり始めるのだよ。

パセリと格闘1 パセリと格闘2
パセリと格闘3 パセリと格闘4

葉っぱでの水浴びが一番好きなのもやっぱりさじさんだ。特にパセリにそそられるらしく、目にしたとたん挙動があやしくなって飛びついてくる。さじさんの語彙にはないはずの「うっひょー」というこころの声が聞こえてくるようだ。それから、ぽきぽきと折られていくパセリの小枝のか細い悲鳴とそれに呼応してただよう緑のよい香り、そしてぬれ雑巾みたいになり果てながらもぶくぶくふくらむ、このちいさい青いトリのよろこびを想像してみてほしい。

メエ

顔トヤがまだ終わらないメエ。実のところ、5月のヒトのこころには、今年もまたトリに良くないことがあるのではないかといういやな思いつきが染み込んで、ぬぐってもぬぐっても消えてくれなかった。具体的な理由があるわけではない、でも漠然と心配していたのはさじのことで、トヤ真っ最中に体力が落ちたときには何もかにもが悪い兆候に見えたりもした。

そんなヒトにあさっての方角から現実を突きつけたのがわれらがおねえちゃんだった。発覚は忘れもしない5月10日。伸びをしたメエを見ると、左の風切り羽根でちょうどきれいに覆われていた部分に1円玉2枚弱の地肌が丸出しになって、仰天した。真っ赤に充血していて触れると何か吹き出しそうに痛々しい。以下、当日に動転しながら書いたものを引用する。

-----
現実はいつもヒトの貧困な想像力をかるがると飛び越える。

今朝おねえちゃんの毛引きが発覚した。そう来たか!とヒトは天を仰ぐ。

飛んでいる後姿を見るとはっきり該当部分が目に入るので、昨日まで分からなかったのはどうかしている。ただし、ちょうど左のつばさに隠れる部分なので羽根を広げなければちょっと気づかない。数日で一気にやらかしたのかも知れないとも思う。癖にならないように一時的なもので済むように、と願うヒトを尻目に、トリの方はいつものごとく妹に向けてときどきぴりぴりしている。ヒトはあんまりヒトを責めずにできることを考えるように。気分転換用のコットンロープのバーチ等を数本購い、しばらく要観察。広がるようなら通院を。しかし結局メンタル面での飼い主のケアにかかる部分が大きいのだ。

そう来たか!ともう一度思う。
-----

あんまりのこころ細さに、プロ(鳥の病院)にすぐ相談することを考えた。けれど強いて落ち着いて考えてみると、ヒトがそのとき一番恐れていたのは毛引きの習慣が定着してしまうことだった。そして、以前ある鳥の病院に連れて行って、結論から言うと必要なかったと思われる手当てを行った結果、この神経質なおねえちゃんのこころがどのように荒れて、それまで信頼していたはずのヒトに向かってきたかを思い出した。ヒトはゆっくり息を吐いて吸ってみた。

トヤ中であっても普通綿羽まできれいにまるく抜けることはない。やっぱりこれは毛引きだろう。怪我した後を気にしてつついているうちに癖になることがある。まずそれを疑おうと放鳥中のおねえちゃんのまわりをぐるぐるまわって観察を続けたが、飛行や行動に影響が出ている様子はない。機嫌も悪くない。ただ、地肌が見える部分の風切り羽根の内側に薄いピンクのシミが認められた。それは怪我からの血痕ではなく、傷んだ皮膚から染み出てきたもののように見えた。

様子を見よう、いつもより少し丁寧に相手をして後は普通に暮らそう、と方針を決めた後も、ヒトはやっぱり不安だった。メエはヒトやトリとのつきあいも普段どおり、食欲も元気もあるように見えたけれど、ヒトの方は外出する度に、帰ってあの赤い地肌が拡大していたらどうしようと考えていた。ふわふわしていない赤いおねえちゃんがうずくまってる姿を想像して自分がいやになった。それでも努めて明るくトリに声をかけることにし、メエが伸びをすれば向かって右下に回り込み「見せてっ脇の下見せてっ」とトリ脇フェチ道を驀進することになった。

さてその後の数日で、赤かった地肌はだんだん白っぽくなり始めた。ちょうど伸びてきた筆毛が地肌の上側にかかりかけていて、メエが抜いたのは綿羽だけだったのかもとヒトは思い始めた。毎朝全力で脇の下をほめたたえられるせいか、メエもややおだやかなおねえちゃんぶりでのしのししていたし、そのうち地肌が隠れ始めてヒトの気持ちも落ち着いてきた。3週間経った今では、左の翼をあげてもそこに赤いおハゲがあったとはもう分からない。幸いなことに今回は経過観察で一段落したように思える。でもこの物語がここでめでたしめでたしかどうかは、今後のヒトとメエさんにかかっているんだろう。

ギイ

遅くなってしまったが、びよちんことギイも元気だ。写真は逆光だね。

このちいさなトリたちにも立派な嗜好があって、さじならキッチンペーパー、おねえちゃんだと耳かき綿棒、そしてギイの場合は動く歯ブラシの先端が偏愛の対象だ。あわただしい朝の時間にこのロープの上で休むトリたちに近づくと、ギイはくちばしを半開きにして魔法がかかったような目で、ヒトの口元で忙しく動くピンクだのブルーだののしゃかしゃかを凝視する。おびえて警戒しているなら縮こまったり威嚇したりし始めるはず、でもこのトリの首はじわじわじわじわ伸びてきて、でも決してしゃかしゃかに本当に触れてみようとはしないのだ。かわいいおばかさんめって、ヒトは毎朝思わせてもらえてる。

そんなこんなでこのヒトも元気ですよ。でもね、つい昨日なんだけれど「ああヒトは喪に服してたなあ」って実感が不意に生まれてね。かなしむだけかなしむ時期も、気持ちを押し込めてやり過ごす時期ももう過ぎたから、後は好きなようにただやっていけばいいんだと思ったんだ。そしたらね、今朝の職場の打ち合わせの机上に、本当に本当に久しぶりに、ぱたぱたとちいさい足音を立ててねじがやってきた。そしてほんのしばらくの間ヒトの鼻に両足でかじりついて、さすがに痛いんでだめじゃんって振り落としたら、そのまままたどこかにぺたぺた歩いていった。

この1年にふたをしていたもろもろが噴水のように吹きあがる。そうできるようになったら自分のペースでいろいろな思い出をトレースしていこうと思う。そして、見たいものがときどき見えても大丈夫、それでいいんだろうって今ヒトは思っている。

今日は「ねじの日」だからって、職場で写真を撮ってもらおうとNEJI Tシャツを持っていったのに何やかんやで着そびれてしまったんだ。それだけが心残りですよ。

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://budgie.sakura.ne.jp/mt/mt-tb.cgi/535

コメント (7)

あっぽ:

ときどきのぞいていた変態はワタシです。
人間山さんにも「とき」がやって来たようで、良かったです。

ウチも鳥が逝ったり、伯母が逝ったり、父が逝ったり、いろいろだけど、あーーそこにいるんだなぁって思えるようになるには時間が必要かなぁ。

今年の実家のクジャクサボテンは大盤振る舞いで咲き狂ってました。
父が大切にしていたものでした。

ペン:

変態その2です(笑)

みなさんお元気そうで良かった。
しかしさじさんは豪快ですな〜。
確かにパセリは楽しいかも!

lineo:

変態その3です。

パセリいいですね。ウチのサザナミにも野菜をたまに供給していますが、足蹴にされています。ガジガジは我が家では小動物用のかじりん棒とかいう小さいのを使っています。

毛引きは発生してすぐに連れてこないとだめ、と小鳥のお医者さんに言われたことがありますが、換羽時期なのでやはり様子見がいいのかなと。それにすぐに連れていくというのはなかなか難しいですよね。

3人、いや3羽とも元気そうでニセ親戚のオバちゃんとしてはうれしい気分です。

NAKANO:

あら、んじゃわたしはヘンタイその4ですな^^

うちの女子・柚井がまさに毛引きにかかってます。
このごろは、飼い主も落ち着いてきて、まあなるようにしかならないなとか思ってます。
長い目で見たほうがイイらしいし。

不思議な力とかなんにもないのですが、
以前いたペットたちが、肩とかそばにいてくれたらなあって思いますよ~。
思い出す時は、本当にいるかもしれませんね。

ペン♪:

なんだなんだ、ここは変態の溜まり場か?(笑)

あっぽ:

なんだかココは居心地がいいです。

人間山:

気づいたらたくさんのヘンタイさんたちの溜まり場に!
いやご無沙汰してるのにうれしいことです。

>ヒトのあっぽさん

「とき」が来たのでしょうか。妄想解禁にしたので、最近では
スケールが大きいねじがちょくちょく出てきます。たいてい
ビルの屋上から、大きな頭をうつむけてこっちをじいっと
見おろしてます。

クジャクサボテン、さぞきれいだったことでしょう。

>ペンちゃん

そんなときなのにありがとう。でかいねじを後頭部に張りつかせ
ながら、ペンちゃんの強さを思っています。

>lineoさん

発生してすぐに、というのは鉄則みたいですね。気にしていじる
のを常態にしてはいけないからなのでしょうね。とは言えメエは
落ち着いていました昨日までは。今日また事件が発覚しまして
頭を抱えています。

>NAKANOさん

柚井さん、そうでしたかー。うちも最近発情が影響してるのかな
と思い始めてきました。落ち着いたら病院に行こうと思います。
飼い主の方があんまり動揺してちゃダメですよね。

東京に来る前毛引きを始めかけた子を「トリの絵も看板に描いて
ある病院」に連れて行ったところ、トリを触りもしない先生が
「ストレスだ飼い主の責任だあなたなんてことだ」とすごく
しかられた経験があります。とにかく止めさせられないかと
思って「エリザベスカラーをすることもあるんですよね」と
尋ねたら、人でなし扱いをされました。

今だったら「もーその医者ダメじゃん」って思って次に行ける
けれど、当時はしばらくトラウマになったことを久しぶりに
思い出しました。

コメントを投稿

About

2009年06月01日 23:16に投稿されたエントリーのページです。

ひとつ前の投稿は「趣味つながり」です。

Powered by
Movable Type 3.34