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ねじのいない日5

さじ

最近さじさんは、大事な趣味である紐かじりの時間を削ってまで、全身全霊をあげてヒトにお説教してくれている。曰く「群れはいっしょにいないとだめなんだ」。

ヒトの気配をちらりとでも感じると、さじさんはケージの定位置=左手前角までよじ登っていく。そして、両足をじたばたさせてステンレスの網目に頭のぼさぼさを限界までめりこませてから、くちばしでケージの縦棒をくわえて頭を上下させ始める。ケージの扉を開けろ、という若ドリ時代からのジェスチャーだ。放っておくとかしゃかしゃかしゃかしゃいつまでも音を立てている。

相手をできないときにはヒトはケージ越しの顔かきでお茶を濁そうとするのだけれど、時間の許す限りごしごしかいてやってもさじさんは決して満足しない。そしてこころを鬼にして知らんぷりしてみると、かしゃかしゃはエンドレスで続くのだ。ヒトがいない間もこんな具合だったらどうしようとそっと物陰に隠れて観察してみたら、ヒトが視界からはずれているときはお休みして、現れるとまたはっとして再開した。どうも、さじさんからは見えるのにヒトがあっちにいるというのが一番けしからんようだ。

こんなときはケージの扉を開けてやるとそれで気が済むらしく、ヒトがあっちに行こうがもう構わずにのんびり羽づくろいなどに励みだす。傍に行く気になれば好きに行ける状態ならいいのだ。ときどき呼びかけて、お互いの居場所が分かればいいのだ。とは言うものの、休日と言えど一日さじさんと一緒にいるわけにもいかないので、今日などはヒトは自宅で息をひそめて過ごす羽目になった。隣にミドリたちもいるだろうによう、と思わないでもないけれど、やっぱりそれは別の話なのだ(恐怖のメエギイと同じケージに入ってもらったら、それはそれでやっかいなことになる)。

やっぱりさみしいよな、さじさん。ほんとごめんな。


さじ

今週ヒトは仕事の帰り際から夜半にかけてひどい気分になる日が多かった。自分でもあんまりだと思って、ある日などはそれを逆手にとっていつまでもいつまでも職場にいてみたら、いろいろな余裕を使い果たしてぐるりと一周してしまったのか今度は妙にテンションがあがったのだけれど、そんなことを毎日やっているわけにもいかない。朝が来るとそれなりの時間に目を覚まして出かける気がわいてくるのがまだ救いで、このサイクルが途切れてしまったらどうしようとめずらしく不安になった。

写真でさじが踏みしめているのは、缶に入った大きなカステラである。ついに元気が出ない朝が来たらこの缶をぱかりと開けよう。それから平行にきれいにナイフを入れて、端っこからいやになるまでカステラをどんどん食べよう。そうして胸いっぱいにカステラがつまったら、歯をみがいてからヒトは仕事に出かけるのだ。勝手に追い詰められて何だか妙な対策を編み出したものだと自分でも思うのだが(実を言うとヒトの考えることはふだんからよく分からない方向へ逸れてばかりいる)、カステラを買ったときのヒトは本気も本気だった。その後出番まではねじに預けておこうとお供えしておいたら、昨日さじさんに見つかってしまったよ。「群れ」の中で隠しごとはできないね。

昨夜はそんなことやってる場合かとか何とかいろいろ迷うところもあったのだけれど、結局えいやっと職場から離脱して不思議な六月の夜に行ってきた。別に何かを我慢してたという意識はないものの5月半ばからこっち遊びに出かけることはなかったし、それどころじゃないのにヒトはもう何やってるのかなあという考えがずっと消えなかったけれど、青いライトがともるたびにトリのことも思い出したけれど、でもやっぱり楽しくてね。それから思いもかけず生の「ひとだま音頭」が聴けて、それがまたすんごく良くてね。ライブハウスってみんなおんなじ方を向いてるからいいよね。やっぱりヒトは泣きましたよ。

疲れて帰ってそのまま寝てしまって、休日の今朝ヒトはだいぶ寝坊した。起きてコーヒーを淹れていたら新しい豆がやけにふくらんで、トリたちは相変わらずぴよぴよと鳴いてさじさんはかしゃかしゃやっていて、そしたらだんだんまあいいやと思えてきたので、缶を開けてむっつりとしたままカステラをたくさん食べて、ヒトはも一度寝直すことにした。昨日4時間突っ立ってられたくらいなんだから、大丈夫でないことはあるまいよ。ねじのいない6月はまあこんな具合に過ぎていきます。

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2008年06月28日 23:46に投稿されたエントリーのページです。

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